2024年「このミステリーがすごい」大賞受賞作
古代エジプトで巻き起こるミステリー。
テーマがツボすぎる。
『ファラオの密室』
古代エジプトについて少し詳しくなり、
ミステリーとしての満足感も大きく有り、
人情劇な部分でも心温まる、そんな作品です。
古代エジプトのミステリーらしく、
探偵役兼当事者がミイラなんです。
探偵がミイラと聞くとコミカルに聞こえるかもしれませんが、そんなことはない。
古代エジプトを本気で考え抜いた、
ミステリー作品になってます。
古代エジプトに興味がなく、重たそうと思われた方も、ぜひ読んでみて欲しいです。
あめだまですが、すらすら読むことができました。
古代エジプトの考え方で面白いなと思ったのが
現世は来世に行く試練であり、
現世の行いを告白し心臓を天秤にかける審判を
通過すると来世の楽園が待っている。
その来世で復活する為に肉体が必要で
死んだ身体をミイラにする。
あめだまは死んだら終わり、死んだら燃やして海にでも撒いてくれと
酒呑のおっちゃんが言いそうな死生観でしたが、
ミイラも死んでからも楽しめそうだなと思った。
こんな古代エジプト的話もあるので
面白そうと思った方はぜひ読んでみては欲しい。
あめだま的評価★★★☆☆(3/5)
『ファラオの密会』
初出版:2024年1月9日
2024年第22回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作
著者:白川尚史
1989年神奈川県横浜市生まれ
東京大学工学部卒(松尾研究室卒)
2012年株式会社AppReSearchを設立
2020年退任し、マネックスグループ取締役員兼執行役に
-あらすじ-
第22回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作!
紀元前1300年代前半、古代エジプト。
死んでミイラにされた神官のセティは、心臓に欠けがあるため冥界の審判を受けることができない。
欠けた心臓を取り戻すために地上に舞い戻ったが、期限は3日。
ミイラのセティは、自分が死んだ事件の捜査を進めるなかで、やがてもうひとつの大きな謎に直面する。
棺に収められた先王のミイラが、密室状態であるピラミッドの玄室から消失し、外の大神殿で発見されたというのだ。
この出来事は、唯一神アテン以外の信仰を禁じた先王が葬儀を否定したことを物語るのか?
タイムリミットが刻々と迫るなか、セティはエジプトを救うため、ミイラ消失事件の真相に挑む!
-ネタバレ有りあめだま的感想-
※本当にネタバレなのでこれから読むかもしれない可能性があるかたは読まないでください。
①推理小説としてのトリックについて
サティの心臓を盗んだのは誰なのか。
ここがよかった。
なぜセティを殺すよう命じていたのか。
なぜ復活したセティに託すのか。
復活の儀の予行演習的な部分によっていろんな
矛盾が綺麗に回収されている。
一貫して推理する部分はここにあったのだが
もう一つの謎、先王のミイラが消失した
トリックには少し物足りなさを感じた。
あの時のあの光はそういうことか、と
神話のオシリスの復活になぞらえた、
先王の復活の儀の為の14部位に切断された
ミイラを上部に開いた通過口から矢で
飛ばすという部分が物足りないのだと思う。
どうせならオシリス同様に
川に流すべきだと思う。
あ、そうだ。
距離も移動速度も変えずに
時間を遅くする砂岩を運ぶトリックは
少し無理があるのではと思った。
文章からでる魅力的な謎に
裏切られる答えだった。
②サティの秘密
この神官サティには秘密があるのは
読み進めていく内に表紙のwatabokuさんの
美しい女の絵からもわかるように
女なのだろうと推測はついていた。
(watabokuさんの絵2016年くらいから好きで
この本を読むきっかけに
大きく貢献してくださっていると思う。)
死後の楽園に行く為の審判で問われる、
42の質問がなされ、
全てにノーで答えなからばならない、
そのうちに
「私は嘘は言った事はない?」とある。
ここでサティは審判通過できないという結末が
待っているのだろうと推測していた。
しかし、セティにはまだ秘密があり、
セティは元奴隷であり、雇い主の子供が死に
その子になり変わっていたのである。
しかし、成り変わり性別も誤魔化したセティは
心臓を取り戻し最後の審判で
本当の自分について話し、
無事楽園に行くことになる。
ここで私が考えたのは
ご都合主義のハッピー話ね、はいはい。
なんてことでも
男として偽っていたが友達の男を愛している
が突然すぎて入ってこない。
なんてことでもなく、
オシリスの審判についてだ。
アテンから人たちを守ったセティの善行を
讃えて今までついていた嘘をオシリスは
最後の告白を踏まえて、
よしとしたのであろうか。
いや、そもそも審判では最後、
自身の心臓と地上で最も軽いとさらる羽根を
天秤にのせて心臓のほうが重くなったら
罪深く不徳の人として怪物アミットに
心臓(魂)を食われるというものだ。
つまり審判で問われた心臓(魂)が健全であれば
羽根より軽くなるのであろうか。
嘘とはなんなのか。
③古代エジプトについて
本当に古代エジプトの世界にいるような
そんな気持ちにしてもらえる作品だと
感動している。
次の王の墓のピラミッドの為に石を運ぶ
奴隷の少女やミイラを作る職人、
若くして王になったファラオ。
登場人物から物語が進む土地の細部まで
見事に想像できる古代エジプトであった。
次に読んでみたいと思っていることが
あめだま的にある。
ツタンカーメンだ。
いろいろな面白い話しが私が小学校の時から
騒がれている謎の大きツタンカーメン。
この作品ではトゥクアンクアメンとして
若き王として登場する。
名前の由来が「アメン神の生きる似姿」から
アメン神を唯一神とするのをやめ
ツタンカーメンと名前が変わるところも
面白かった。
総括して、古代エジプトについて興味がわいて
止まりません。
どうも下のリンクで古代エジプトにすごく
詳しそうな方が詳しく解説してくださっており、
本書で古代エジプトを理解するのはいささか、
間違いが多いそうだ。
おそらくこの本の正しいジャンルなのかと。
この方の感想すごく面白いので、こちらも是非。
https://55096962.seesaa.net/article/502016123.html
たしかに、私が古代エジプトについて知ろうと
本を調べるとその本が本書の参考文献に
出てきた。
しかし本書には
古代エジプトへ新しい扉を開いてくれたこと
に大きな感謝しかありません。